1-6 息を止めて


「この机の表面なんです。できれば息止めてじっくり見ていただきたいのです」と言われて一同は

かわるがわるじっと見つめていった。しかし見終わったあとキエは声を出した。

「机の表面でしょ?別に変わったところはないように思えますけど」

「どなたかお気づきになられたでしょうか?」

地井夫婦は意味合いがわからず首をかしげている。優子は黙っている。

「もう一度、どうぞよ~く見てください。この表面の埃です」再び、みんながかわるがわる机の表面を見つめた。

「そういえば表面がまばらにあるように見えるところがあるようですけれど」と見終わった優子は言った。

「そうですよね、まばらなところがあるようです。普通、テーブルでも机でも全面を一度に拭きますよね。

しかしちょっとこれは違うところがあります」そう伊勢に言われてもう一度、皆はかわるがわる机の表面を

斜めからじっと見つめた。こんどは長い時間がかかった。

「これはもしかすると」見終わった優子は伊勢を向いて言った。



              オナヤミハナシ
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