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「介護事故」と認めた施設側の損害賠償について

ご相談者:50代/男性

永井隆一先生 こんにちは。以前 「介護施設内での父の骨折」で、心強いアドバイスを頂きました宮崎県M市の者です。今回は、「介護事故と認めた施設側の損害賠償」について教えて下さい。
あれから先生の言われたとおり市役所にて「事故報告書」を入手し、施設側に対しては「詳細な調査報告書の提出」を12月12日、文書にて直接持参で求めました。

12月26日 施設会議室にて私一人と施設長を含めた施設側3人。介護事故を発生させた事の侘び、そして私達家族に対する事務怠慢による報告書遅延の侘びに始まり、事故発生と推測される11月3日から12月26日現在までの経過記録、内部調査、内部聞き取り・検証等の調査報告書A4紙17枚を受け取りました。

[事故の概要]では介護事故として、「日常的な移乗動作介助が原因と推測される左肋骨6番7番8番9番の4本の骨折及び左血胸のため全治3ヶ月の重傷を負わせた」とあり、[内部調査結果としての原因]でも、「介護サービス提供時の打撲による骨折と日常的移乗動作介助による骨折が考えられる」と記してあります。

しかし事故を起こした介護職員は限定されておらず、また「職員の不慮の過失」や「故意による虐待行為(殴打等)は否定できない」としながらも、「無事故無違反の優良職員・信頼される模範職員であるため、虐待は考えていない」と記されておりました。
[被害者及びご家族に対する謝罪と今後の対応]という結びのページでは、1.介護事故を起こした事に対する侘びと反省 2.異変発見から受診までに時間を要した事に対する施設内での医療機関受診体制の不備の反省 3.家族への事故報告の遅延(2ヶ月)に対する事務怠慢の反省 ※4.損害賠償について 5.父に対する今後の介護方針 以上でした。
※4.の損害賠償についての全文を書きます。「当施設がこのような事故を引き起こさなければ本来支払う必要がなかった医療費を発生させた事について深くお詫び申し上げます。被害者(父)様の骨折の治療に必要な医療費について、全額当施設が負担させて頂きます」。とありました。
非常にありがたい計らいだと思います。ただ納得出来兼ねる点として、これには父が受けた「精神的・肉体的苦痛に対する損害」は全く考慮されていないのではないかと思われるのですが、これで妥当なのでしょうか。今回はこの件を教えて頂きたいのです。よろしくお願い致します。
ちなみに今回の医療費は、父の介護認定や障害者認定等により数千円と思われます。

検査結果骨密度110%の父の正常な骨は、左わき腹肋骨が4本、縦に真っ直ぐのラインで折れおり、担当医師は、「打撲の可能性が最も高い」と診断しています。一般的に骨が折れる時は悲鳴を上げるか、呼吸が出来ないほどの痛みがあった場合は悲鳴ではなく、耐えるような唸り声になるそうです。
12月26日 施設側との面談を終え、帰り間際の私に施設のお一人はこう言いました。「骨折の原因はお父様の他の病気が原因かもしれませんから血液検査をさせて下さい」と。 お断りしました。 これが施設の真摯な「誠意」というものなのでしょうか。
86歳 介護認定4 寝たきりで ボケて 痛みに耐えながら真実を語れぬ孤高の父を、哀れに思います。

50代/男性 | 日付:2009年12月28日(月) 13:24 JST | 閲覧件数: 23,635

弁護士等を通して慰謝料請求の意思を表示されてください。

永井 隆一

永井でございます。
ご相談内容を拝読いたしました。

その後、お父様のご様態はいかがでしょうか?
ご家族も心身ともにお疲れのことと存じます。あなたご自身もどうか大事にされてください。

ところで施設側は、「事故」であることが「推測される」との認識を回答しているようですね。虐待(故意)ではないことを主張していることから、施設側は事故の概要もほぼ把握している様子が伺えます。
事故であれば、安全配慮義務違反として、民法上の不法行為責任が成立するケースです。
あなたから精神的損害として慰謝料を請求することが可能です。

これまでの介護事故の関連記事を調査したところ、施設側の真摯な対応により、家族側がこれを受け入れて損害の賠償に至らないケースも多々あるようです。
「世話になっているから、ま、今後は注意してくださいね。」といったところでしょうが、本ケースにおいて、施設側の対応は社会通念上甚だ不誠実であると存じます。

今後、可能であれば弁護士等の専門家を介して不法行為による損害賠償請求について検討されることをお勧めいたします。お知り合いの弁護士がいればその方に、おられなければ「法テラス」などにご相談ください。請求なので、あなたから施設へ賠償額等を提示して、働きかけることになります。

もうひとつ、「業務上過失傷害」により刑事責任を問うことも可能かと存じます。
ただし、これはあくまで「示談」という選択肢に導くように交渉されてください。事実上刑事責任を問う場合には、施設側との関係に大きな軋轢が生じます。

お気をつけいただきたいのは以前も申し上げましたが、介護事故に関する判例はまだ少なく、またご本人の今後の処遇も含めて施設側との対立することが果たして賢明かどうかの判断も必要になります。故に、あなた側も「和解」のラインとして損害賠償の請求額をおおまかに決めておくことが必要です。交通事故などで見られる慰謝料の相場というものが介護事故の場合には測りにくいケースなので、これについても弁護士等と協議することが妥当でしょう。

事故を起こした側=加害者である施設は、ある程度までは過失を認めております。
また、施設側が損害保険に加入していれば、ある程度スムーズな話合いが可能かと存じます。これに加入していない場合や利用を躊躇するようであれば、折り合いがつかないことも想定されます。また、話合いが感情的な部分に及ばないようにするために、上記のような弁護士等の介入をご検討ください。

施設側から提示された報告書にある「5.今後の介護方針」の部分も重要になります。
特に本ケースでは、施設側より事故報告の遅滞及び詳細な原因究明がなされていないことが、あなたを含めたご家族の施設への不信感を高めた大きな要因です。「事故」である以上、今後も発生することが想像できます。事故を防ぐために、どのような対応策が講じられたのか?果たして実践はされているのか?また、真に効果的なものであったか?
継続的に検証されるものでなければ「絵に描いたもち」に過ぎません。再発を防ぐためにもこの部分についても厳しい対応が必要です。

あなたが納得のいかないお気持ちはお察しいたします。
まずは、あなたの意思を手続き上で表示する手段として、法律職の専門家にご相談されることをお勧めいたします。

小職としましても、お近くであれば是非ともお手伝い差し上げたいケースでございます。

ご不明なところ、また、具体的な手続きのご要望がございましたら、小職までご連絡賜りますようお願い申し上げます。

回答日時:2009年12月31日(木) 14:23 JSTお礼のコメントを書く

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