1-21 時の癒し

それは、、時だった。


このなんの変哲もないと思えるもの。その時というものが、日々を癒してくれていたのである。
 

あれから、10年が過ぎ去っていた。杉浦はウファの店長になっている。
 

そして先日の夏のあの日。突然、その機会は現れた。
喫茶店ウファに優子と早苗が突然、入店してきたのである。


杉浦は目が眩んだ。別人だと思った。現実と過去が交錯しクラクラとした。立ち尽くす心に湧き出す新たな炎が心臓を熱くしては突き動かしす。あまりの驚きに惑い、夢のように感じられた。10年前の月日の幻が現実となり目の前に繰り広がれている。心臓を突き刺すような痛みを覚え、杉浦は思わず胸を押さえた。胸を抑えながら{落ち着け、落ち着くんだ }と戒めようとしたものの、脂汗がじわりじわりと噴出してきてかき乱されている。
 

ウェイトレスから「店長、店長!」と何度か声をかけられなければ、いつまでもじっとたたずんでいたに違いない。
たしかに覚えのある女性二人は窓辺側に座って談笑している。一人は優子。そしてもう一人は名を忘れてしまったが顔は覚えている。
 

杉浦は我に返ると{ もう二度とはないかもしれない}という不安が急に襲ってきた。
意を決し、二人のほうへと近づいて行った。

 

 

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